本作は太平洋戦争を舞台にしたタクティカルな味付けのシューターである。数年前アクション寄りのMedal of Honor: Allied Assaultをプレイした後に本作のDemoを動かしてみたことがあるのだが、あまりの毛色の違いにひどく戸惑ったことを覚えている。しかし、ここ最近ようやく落ち着いたゲームをクリアできるようになってきたので、ふと存在を思い出してやってみたわけだ。…が、あまり面白くなった。その要因はあまりにも基本に忠実かつ窮屈なシューターだからだ。つまりは注意深く索敵を行い、慎重に射撃し、無駄弾を減らし、できるだけ被弾を減らせ、ということなのである。一応はリーダー格の指示に従ったり、味方部隊に指示を飛ばせるので、頭の良さそうなAI(=良いとは断定できない)に頭の良さそうなAIをぶつけるというBrothers in Armsに近いゲームとして遊べなくもないが、面白みに繋がっているように感じなかった。分かりやすいのは制圧射撃を指示し敵の注意を引いている間に別方向から襲撃するといった戦術なのだが、戦う場所が狭いため、自由度以前に答えが半分見えているようなものだ。付け加えると、私は指示を飛ばすのがド下手なので、自分自身で気合を入れたAimでゴリ押ししていく方が良い結果になることが多かった。
ただまぁ、面白くないからといって、それがすなわちダメゲーかというとそうでもない。なにしろ糞真面目に一人称視点型戦争体験ゲームを作ろうと思えば、面白くなくなるのはある種当たり前なのだ。白兵戦に限って言えば、M1ガーランドを持ったアメリカ兵に対して日本兵が正面から戦うわけがないし、ジャングルの中で日本軍が迷彩服を着ながら待ち伏せるという戦闘も実際に多くあったのだろう。CoDであればこれをゲーム(娯楽)としてプレイヤーに苦労をさせず楽しませように作るが、本作MoH:PAでは歴史をなぞるという遊びをプレイヤーに提供したかったように思う。そのため爽快さとは無縁だ。先に述べたようにジャングルでの戦闘がゲーム中でも多いわけだが、視野性は非常に悪く、ゲーム(娯楽)としてはありえない程に敵(日本兵)が発見しづらい。せわしなくちょこまかと動き回ることからも頭はおろか、体に当てるにも一苦労だ。そんな苦しい戦闘をある程度フォローしてくれる衛生兵がありがたい。彼は各Mapにつき四回という制限付きだが体力を全回復してくれるため、ゲーム全体の緊張感を保たせつつも、ある程度の失敗を帳消しにしてくれるのである。このさじ加減が本作で一番優れている点だ。アクションゲーマーでも頑張ればなんとかクリアできるような難易度設定。確かに万人に好かれるというわけではないが、珍しい題材を扱っているわけであるし、盛り上がるスクリプト演出や迫力雰囲気抜群のサウンド+EAX、戦争に巻き込まれたアメリカ新兵の心境、アメリカ側からは見た零式艦上戦闘機などが描かれており、全体を見てみれば質の高いゲームであることに間違いない。歴史の勉強も兼ねて日本人かアメリカ人ならば一周遊んでみるのも悪くないように思う。
◆ある日の真珠湾。先日演説された「リメンバー・パールハーバーを和解の合言葉に」は流石に「核なき世界」と同レベルにしか聞こえない。日本側の開戦連絡が遅れたとか意図的に石油を止められたとかドイツの同盟だったからとか中国が宣教師を大量に受け入れたとかイギリスに頼まれたとかいろいろな話があるわけだが、わざわざ調べないと手に入らないそんな情報よりも、日本軍が奇襲している絵面がポンと映像で出回ればアメリカはおろか世界中からも悪者にしか見えないわけで
◆衛生兵のジミー。分隊全員を回復させる頼りになるヒーラー。四次元ポケットから無尽蔵に回復剤を取り出すくせに、主人公トミーにだけは四つしか渡さない鬼畜でもある。大人の事情で不死の肉体を持っているが負傷しないというわけではないので、瀕死になりながらも自分で自分を治療するブラックジャックのような芸当も見せてくれる。シュール。重ねて言うが、彼が居るおかげで戦闘難易度がマイルドになっており、根気があればどのようなプレイヤーでもクリアできるように思う
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